哲学とは何か

1.アートマン(自我)

 アートマンは自分自身である。ブラフマンは宇宙そのもの=絶対者である。自分自身であるアートマンが何か分かると、宇宙の絶対者であるブラフマンを認識することが出来る。
 私自身は精神の一部であり、精神の全体が絶対者である。肉体が物質全体である宇宙の法則に従う様に、私である精神の一部は絶対者である精神の全体の法則に従っている。
 精神は、物質を動かすことが出来る。私と言う精神は、手と言う物質を動かすことが出来る。精神の全体である絶対者は、物質の全体である宇宙を動かすことが出来る。
 私は、精神と物質とにおいて小さな宇宙と神である。私は宇宙及び神と一体である。アートマンとブラフマンの同一を体認することが、ウパニシャットの目的である。

2.愛

 愛は自分に対するものである。私の感じる宇宙全体が私自身である。外界の宇宙を直接感じることは出来ない。私の感じている宇宙は、私が作り出した内界である。
 私の欲しい宝物も、私が大切に思う人も、私が忌み嫌う敵も、避けたい臭い物も、全て私の感受性が作り出した内界であり、私自身である。欲しい宝物は私自身であり、既に私の物である。大切な人も私自身であり、私の者である。憎い敵も私の一部である。だから、「汝の敵を愛せよ。」と言えるのだ。
 愛とは自分自身に対するものであり、皆自分を愛している。

3.アイデアリズム(観念論)

 イデアとは、概念である。人間は、自己の目的に沿う様に対象物をコントロールするにはどの様に操作したらよいか、その都度一々対象物の構造や性質を調べなくても良い。心の中に、対象物の性質や操作方法が感じとしてインプットされている。これをイデア或は概念と言う。

 例えば、尻尾を振っている犬が居たとする。犬は、太古より人間と共に暮らしてきた。尻尾を振っている犬は、人間に懐き良き友人となる。そう記述した概念が、心の中に確立している。従って、その様な犬を見ると、頭を撫でたり話しかけたりする行動を取る。
 一方、大きな蛇が居たとする。人間がねずみ位の大きさであった時代、蛇は恐ろしい天敵である。従って、蛇を見ると恐怖心を起こし一目散に逃げなければならない。蛇は自分を襲う恐ろしい生き物であると記述したイデアが、心の中にインストールされている。

 これらのイデアは、人間が進化の過程で獲得したものであり、遺伝子の中に物質構造としての記憶として受け継がれてきた。長くてにょろにょろ這う生き物は、自分を食らう恐ろしい生き物であり逃げなければならないとの記憶である物質構造を、遺伝子が脳を構成する際に漠然とした形で形成する。それを、経験や学習により洗練して行き、蛇と言う概念が完成される。
 言わば、イデアは心の「ソフトウェア」である。