重力の特異点

特異点とは

 重力の強さは、作用し合う物質の質量の積に比例し、物質間の距離の2乗に反比例します。ここでは、ニュートン力学を使って簡略化して説明します。
 重力の強さは
F=GMm/r^2
で表すことが出来ます。G=重力定数=6/672×10^-11m^3s^-2Kg^-1、Mとmは引き合う物質の質量、R=物質間の距離です。

 星の質量が大きくても、核融合反応で爆発している時は、爆発により広がろうとする力と自身の重力とが釣り合い、星は一定の大きさを保っています。しかし、星が寿命を迎え核融合反応が少なくなると、星は自らの重力により自らの中へ落下して行きます。そして、大きさの無い点になるまでどんどん落下して行きます。
 その時、r=0となります。すると、重力F= GMm/0となります。数学上は正しくありませんが、これでは、重力は無限大となってしまいます。
 この様に、重力の特異点とは、「重力場が無限大となる場所」を指します。一つでも無限大の重力が現れると、それは宇宙にある全ての物質を吸い込んでしまいます。重力の特異点から幾ら離れても、重力F=∞/r^2=∞となります。しかし、現実にはこの様なことは起こってはいません。これは理論が未完成であるために、現実と乖離したのです。この重力の特異点の矛盾を理論上解消するために様々な考察がなされました。

特異点を隠す方法

 一つには、その様な重力の特異点が存在したとしても、この宇宙には何の影響力も及ぼさないと考え方があります。重力は周りの空間を歪めます。そして、光でさえ脱出することが出来ない領域をシュバルツシルト半径と言います。
 この中からは、ブラックホールの強力な重力により、何ものも出てくる事は出来ません。一切の情報が外には出ては来ないので、外からはこのシュバルツシルト半径内を知る事は出来ませ。。従って、これを「事象の地平面」と呼びます。

 この様に、重力の特異点は、このシュバルツシルト半径の中にあり、「事象の地平面」によって隠されるので、一切外の宇宙には影響しないと考えられていました。これで、一般相対性理論は破綻せずに済みます。「事象の地平面」の外側では、特異点が存在するにもかかわらず、これを無視して物理現象や因果律を議論することが出来ます。

 この考え方に対して、相対性理論の方程式を使うと、事象の地平面に囲まれていない「裸の特異点」が現れてしまうことが分かりました。これでは、重力の特異点が、我々の世界に影響することになります。

超弦理論

南部陽一郎

 現在、量子力学理論が完成すれば、この問題は回避されると期待されています。最も有力視されているのが、「超弦理論」です。宇宙のあらゆる物質やそれを動かすあらゆる力は、1本の弦で現されます。1次元の振動する物体により全てを説明出来るのです。そして、この弦は一定の長さを持つので、物質は重力により点にまで収縮してしまうことはありません。従って、特異点が現れることはなく、訳の分からない「無限大」は出て来ないのです。

 この様に特異点は現実には存在してはいけないのです。理論上、距離が0になると分母が0となる為、それ以上議論が出来なくなるのです。それは、その理論が未完成であることを意味しています。
 ですから、特異点は分母が0となる数式で表されます。